真実

日本は衰退の一途を辿っていた。打開策として嘘禁止法が制定された。きっかけは一人の男の意見であった。
20XX年　7月22日　嘘禁止法施行。

謹啓。
この日を待ちに待っていました。やっと僕たちは開放されますね、この嘘にまみれた世界から。
あなたに出会ったとき、運命を感じました。運命という言葉で片づけてしまう事が惜しいほどに。
ですが、知ろうとすればするほど貴方は逃げて行きました。
私は貴方を憎み、考えました。
そうして分かったのです。貴方は何も悪くなかった、悪いのはこの世界でした。
運命という絶対的な存在が否定されるのは、嘘が存在する現代に私たちが存在してしまったためなのです。
ですがそれも今日でお終いです。手紙を出すのも最後になるでしょう。そうだ、仕事を辞めて一緒に住みませんか？
数か月に一度なんて多すぎる転勤があるお仕事は大変でしょう。
明後日、伺います。
由美子様へ　頓首。