月形冠

4
3

私の住む城下町は月形樹という木にぐるりと囲まれている。
国樹でもあるその木は、一年中香りの良い枝葉を繁らせ春には薄黄色の小さな花をつける。
根本から切り倒しても一年もすれば新しい幹が大人の背の高さまで育つ生命力のある木だ。

この国の最初の王が開国の時に月形樹の祝福を受けたため、その血を受け継ぐ者は月形樹の枝葉を編み込んだ月形冠を頭に載せて生まれてくる。
頭から外れない月形冠は王族の目印とされている。

円形だと思われている月形冠は実は、空の月とともに頭の上で満ち欠けしている。
完全な円が後頭部からだんだん欠けていき半分のティアラ状になり、やがて全ての枝葉が消えて見えなくなるが、次の日からはまた後頭部へ向けて枝葉が伸びて完全な円に戻る。
しかし、王族を正面からしか見ることのない町の人たちはこの事を知らない。

今日は新月の日。
ドレスからワンピースへ着替え、私は城を抜け出した。
ファンタジー
公開:21/07/22 08:54
更新:21/07/22 14:02

まるちーず( チェンマイ(嘘) )

『ショートショートでひらめく文章教室』を読んで書き始めました。
文章書けるようになりたいです!!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容