海馬

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大海原とは言い当て妙で、実際に、この海が草原になることがある。そして草原となった海には、必ず海馬が現れる。
海馬が見えるのは、長い歳月の間、この海で漁師をしていた俺のような船乗りぐらいだ。
海馬の外見は、額の中央に一本の角が生えた馬、一角獣とも呼ばれるユニコーンにそっくりだ。
海馬が颯爽と草原を駆け巡ると、連なった小さな波を起こす漣に似た音が海から聞こえてくる。そして海馬が駆け抜けたあとには蜃気楼が現れる。肉眼で見える蜃気楼は非常に珍しいから、はっきりと蜃気楼が海に見えたときは、海馬が通った痕跡だとわかる。
海馬は海神の使いとされている。その証拠に海馬が去るときは、鳥の翼が生えてペガサスに変化する。そう、ペガサスはポセイドンの子供だ。
海馬は、空へと羽ばたき、天へと向かう途中で竜となって姿が見えなくなる。
この海には、海馬が落としていった子供の竜、タツノオトシゴ(竜の落とし子)が多いんだ。
ファンタジー
公開:21/07/22 07:03
大海原 ユニコーン 蜃気楼 海神 ペガサス ポセイドン タツノオトシゴ 海の日

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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