プロの女

「商売あがったりですよ」
ある女が嘆いている。

インタビュアーは続ける。
「あなた程の人でも、新型ウイルスには勝てませんか」

「否定的なことを言うつもりはないですけど、マスクしてたら仕事が成り立たないんでね。素顔が晒せないとどうしようもないんで」
と、否定的なことを言っている。

インタビュアーは、うんうんと相槌を打ちながらメモを取っている。
そして質問を続ける。
「では最近は仕事はしていないのですね。そうすると勘が鈍りませんか?何か努力されていることはありますか？」

「ほっとけば当然、勘は鈍りますよ。なのでバナナやキュウリを丸ごと口に入れてトレーニングを重ねています」

「努力されているんですね。最後の質問です。あなたにとってプロフェッショナルとは？」

「人の心をドキドキさせられる人ですかね」
そういって女はマスクをおもむろに外し、頬まで裂けた大きな口で笑う。