無人駅にて

正方形、もしくは円形の用紙に開けられた穴。用紙の４分の１程を占める穴を私は駅と呼んでいる。
この駅に訪れるは列車でも電車でもない。ここを訪れるのは星座である。
穴の開いた用紙の下にあるもう一つの用紙。それを動かせばひと月ふた月と時が流れ、その時々に見せる星座を駅へと連れてくる。
用紙の名は星座版。小学校の頃、一度は使った事があるだろう。くるくると動かし、遊んだことがあるだろう。
そして、すぐ飽きてしまったのではないか？
星座版とはそういうものだ。後生大切に持っておくようなものではない。
それに今ではスマホという便利な道具がある。星座版の出番はますますなくなっていくだろう。
それでも私は星座版を愛してやまない。
星座版に描かれた星々が駅に停まる。星座を確認しては夜空を見上げ、目に映る星の世界の物語を夢想する。
星座版を回す私は神になった気分だ。板を片手に星になった神々との語らいを想像する。