雪花の中で、

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雪に埋もれてしまうんじゃないかと思っていた。
降り積もる悲しさに、虚しさに、やるせなさに押し潰されてしまうと。
抵抗しようと思えば思うほど、足はすくみ動けなくなる。
あぁ、痛い。
足先から次第に感覚は失われてゆき、全てがどうでも良くなるような痛さだった。
私が私であることを辞めてしまえば、赤子が眠るように息を止められる。
まるでそうすることが自然であるように。
何度も私の瞳は焦点を失い、視界は雲がかった。
このまま意識を手放して、暗闇の中で美しく散りたかった。
可能性と名のついた、手の中に残る種をあの真っ白な雪へばら撒きたかった。

でも。


目を閉じて浮かぶ、花々の力強さに涙が零れた。
彼女たちは、この寒さにじっと耐えて春を迎え、夏にめいっぱい空へ向かい、秋に次へと繋げるのに。

こんな、情けない、吐き出すことすら億劫になる言葉を思い浮かべている自分に笑えた。



ああ、息をしよう。
公開:21/07/20 03:53

( 東京 )

色んな色の作品を目指します。

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