無限泡沫
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「お墓参りかな?」
ホームで列車を待っていると、声をかけられた。スーツの袖をまくった男性が、私の抱えた白菊を見ている。
「お見舞いです」
意地悪を言ってみせ、笑う。この沿線で、霊園が近い駅はここだけだ。
「その後、祖母の墓参りを。と言っても早くに亡くなったんですが。祖父との馴れ初めになったSLが、数十年ぶりに走るとかで」
「お祖父様は?」
「去年。百歳の大往生で」
見ず知らずの人なのに、妙に懐かしく感じる。確か、生前の祖父も話していた。理屈では量り難い奇縁が世の中にはある。夢の欠片の様な泡沫の一瞬も、全て人生の大切な一部だと。
「今日の海は穏やかだね」
「海?ここに海なんて……」
水色の風船の群れが視界を横切る。微かに潮風を嗅いだ気がした。
「そこで立ち止まらないで下さい!」
交通整理に注意され、列に戻る。外出許可を取った妻が、白いワンピース姿で手招く。
夏空の彼方から汽笛が響いてきた。
ホームで列車を待っていると、声をかけられた。スーツの袖をまくった男性が、私の抱えた白菊を見ている。
「お見舞いです」
意地悪を言ってみせ、笑う。この沿線で、霊園が近い駅はここだけだ。
「その後、祖母の墓参りを。と言っても早くに亡くなったんですが。祖父との馴れ初めになったSLが、数十年ぶりに走るとかで」
「お祖父様は?」
「去年。百歳の大往生で」
見ず知らずの人なのに、妙に懐かしく感じる。確か、生前の祖父も話していた。理屈では量り難い奇縁が世の中にはある。夢の欠片の様な泡沫の一瞬も、全て人生の大切な一部だと。
「今日の海は穏やかだね」
「海?ここに海なんて……」
水色の風船の群れが視界を横切る。微かに潮風を嗅いだ気がした。
「そこで立ち止まらないで下さい!」
交通整理に注意され、列に戻る。外出許可を取った妻が、白いワンピース姿で手招く。
夏空の彼方から汽笛が響いてきた。
公開:21/07/20 02:36
更新:21/07/20 02:38
更新:21/07/20 02:38
gonsukeさん
「ある夏の日」
射谷友里さん
「砂の駅と卵売りの少女」
秋田柴子さん
「誰もいない砂浜で」
水素カフェさん
「砂浜に現れた例の紳士」
リレーSS。全盛り(笑)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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