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―しまった、寝過ごした。
慌てて次の駅で飛び降りた途端、俺は愕然とした。
そこはきらきらと輝くばかりの海だった。
誰もいない砂浜に女性が一人立っている。あの後ろ姿は…。
次第に足が早まる。だが二人の間は縮まらず、まるで走れば走るほど遠ざかるようだ。待ってくれ、待って…!
「危ない!」
我に返るとそこは元の駅だった。スーツ姿の男が俺の肩をがっちり掴んでいる。
「気をつけなさい。線路に落ちてしまうよ」
「す、すみません…でも…でも海が…」
男は首を傾げた。
「海?この辺に海はないよ。ああ、でもお盆の頃の海には気をつけないと。君はまだ呼ばれるには早いだろう?」
まだ早い…そうか。追いつけなかったのは、君の優しさだったのか。
「大丈夫、また会えるよ。それまで大事に想い出をしまっておきなさい」
小さな囁き声に、俺ははっと顔を上げた。
「…綺麗な海だったね」
そう言うと男は、初めてにこりと微笑んだ。
慌てて次の駅で飛び降りた途端、俺は愕然とした。
そこはきらきらと輝くばかりの海だった。
誰もいない砂浜に女性が一人立っている。あの後ろ姿は…。
次第に足が早まる。だが二人の間は縮まらず、まるで走れば走るほど遠ざかるようだ。待ってくれ、待って…!
「危ない!」
我に返るとそこは元の駅だった。スーツ姿の男が俺の肩をがっちり掴んでいる。
「気をつけなさい。線路に落ちてしまうよ」
「す、すみません…でも…でも海が…」
男は首を傾げた。
「海?この辺に海はないよ。ああ、でもお盆の頃の海には気をつけないと。君はまだ呼ばれるには早いだろう?」
まだ早い…そうか。追いつけなかったのは、君の優しさだったのか。
「大丈夫、また会えるよ。それまで大事に想い出をしまっておきなさい」
小さな囁き声に、俺ははっと顔を上げた。
「…綺麗な海だったね」
そう言うと男は、初めてにこりと微笑んだ。
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公開:21/07/17 12:40
更新:21/07/17 12:40
更新:21/07/17 12:40
gonsukeさん
「ある夏の日」
射谷友里さん
「砂の駅と卵売りの少女」
スーツ姿の男
#126
2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません
【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)
【近況】
第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞
【note】
https://note.com/akishiba_note
【Twitter】
https://twitter.com/CNecozo
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