ルーシーボックス

0
2

「先生の理論だと人類の誰しもその…箱を持っていると?」
「例えばもう忘れたと認識している曲を聴いてみてください。ある程度聴くとふと懐かしく感じるはずです。それは貴方の記憶の箱です」
「えっと…その辺りをもう少し詳しく」
「脳はあらゆる情報を一先ず箱に入れます。一般的にコレを覚えると勘違いしがちですが違います。その情報を取り出す事が覚えているという状態です」
「つまり忘れるというのは取り出す事ができなくなっている状態だと」
「そう。肝心なのは箱は存在し続ける事です」
「話を戻しますが、先祖の箱も残っていると?遺伝という形で」
「…はい。ただ取り出せない箱の存在を証明出来ないのでは笑い者に等しいですが」

ルーシーボックス
刑事は教授の卓上メモにあった言葉を手帳に書き取った。
礼を言い部屋を後にする。
全国で逮捕された犯人が口々に「頭の中で突然誰かの箱が開いた」と供述する事件が多発していた。
SF
公開:21/07/17 05:41

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容