天体菓子

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天橋立にある老舗和菓子店の熟練職人が饒舌に語りだした。
「いま職人人生の集大成として『天体菓子』を作ろうと日々励んでいます。
よく茶室は小宇宙にたとえられますが、茶会で抹茶とともに供される和菓子にも小宇宙が広がっているのです。それを具現化したものが天体菓子です。
天体菓子の透き通った寒天は天空を表し、寒天から見える金箔で薄くコーティングした砂糖は星、星の集まりが銀河、天の川です。そこに一粒見える京丹波の黒大豆はブラックホールを表現しています。
天体菓子は見た目だけでなく、その味も天下一品を目指しており、召し上がった皆様が舌鼓を打つような究極の和菓子にしたいと考えています。
そして最後に魂を入れます。すると寒天から見える星や天の川、ブラックホールがゆっくり位置を変えていきます。これぞ職人の腕の見せどころです。
本日は天体菓子の試作品をご堪能ください。和菓子が織り成す小宇宙に引き込まれますよ」
その他
公開:21/07/18 07:01
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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