無人駅にて

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大きな袋を抱え、山道を登っていく。今どのあたりだろう?人里からもうかなり離れたか?
不安があるのでもう少し歩を進める。人の手の入っていない山道をかき分け、開けた場所に出る。
思わず膝をついてしまった。目の前に立派な駅舎が立っている。ここはまだ人里なのか…
駅員らしき男性が私に近づいてきた。「どうされました?」
私は袋の中身を取り出す。ぐったりとした狸が数匹。それを見て駅員は怯えた。
私は首を横に振る。「私は彼らを自然の野山に帰しに来たのです。生まれ育った山を都市開拓で失い、都会に住む事を余儀なくされた彼らを人間の勝手な理由で殺したくなかったのです」
駅員はホッと胸を撫で下ろす。「なら、私が面倒見ましょう」
コン!と音がしたかと思うと駅員の姿は狐に変わっていた。
「この駅は狸の郷にも繋がっています。私が責任を持ってお連れします」
その姿と答えに私もつい変化が解け、化け猫の姿を晒してしまった。
公開:21/07/17 20:55

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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