むこうがわ

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先日亡くなった祖母が、川の向こう側で手招きしていた。こんなに明るい時間なのに、私は幽霊を見ているのか。ここは三途の川だったか。
私は祖母が好きだったが、それ以上に祖母は私の事が好きだったと思う。いつも優しく手を繋いでくれたし、私といる時はいつも笑顔だった。
そんな祖母が、現世で死のうとしている私を迎えに来るのは納得の事だった。死後も私を想ってくれたんだ。
少し迷ったが、祖母の元へ行く事にした。もう、疲れた。石の上をトントンと飛び移り、川を渡った。祖母は私の手を引くと、優しく抱き寄せた。懐かしい香りに安心してか、死への恐怖か、涙が頬を伝うのが分かった。

その時、後ろから轟音がした。振り返ってみると、大きな岩が山肌を滑り落ちるのが見えた。落石だ。ちょうど私がいた辺り。
恐怖に固まっていると、祖母がいない。どうやら私はまだ生きなくてはいけないらしい。私の手に残る祖母の温もりが、そう感じさせた。
ファンタジー
公開:21/07/20 18:00
更新:21/07/19 22:42

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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