世界で一番

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目的不明の無差別バイオテロが相次ぎ、人口は激減。社会は崩壊し、終末を待つこの世界で、彼は彷徨っていた。

最後に何か食ったのは、いつだったか。体に力が入らない。何故生きているのか。死にたい。そんな思いが頭を占める。暗い目で、手の中の銃を見る。

不意に、懐かしい香りが感じられた。カレーの匂いだ。彼は走った。脱力していた足が嘘のように力強く地を蹴った。
匂いの元は、小さな畑が隣接した小屋からだった。無我夢中で彼は走った。
小屋の扉を開けると、壮年の男性が鍋をかき混ぜていた。
息が切れて声も出せない彼に、壮年の男性はカレーを振る舞った。この世のものとは思えぬほど、そのカレーは美味かった。彼は涙した。

壮年の男性は語る。私は誰よりも美味い物を食わせる人になりたかった。私は自分の料理じゃなく、世界を変えて、それを成し遂げたのだと。
美味いだろ?と満足げな笑顔を向ける壮年の男性に、彼は銃を向けた。
ホラー
公開:21/07/17 19:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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