砂の駅と卵売りの少女
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蒸気機関車は黒い煙を吐いて最終駅に止まった。降りると見知らぬ砂浜であった。
革靴で難儀している横を白いお揃いのワンピースと麦藁帽子をかぶった母娘が小さな丘に向かって歩き出す。そちらに目を移すと、水色のワンピースを着た少女が籠を持って手を振っていた。
「卵売りですな」
ぎょっとして振り向くとスーツ姿の男がぷかりと煙草を燻らしていた。
「卵売り?」
「その卵は寿命が延びるという噂だよ」
「はあ」
「その様子じゃ、うっかり寝過ごしたというところかな」
母娘が卵売りの少女から小さな包みを受け取って戻ってくる。
「娘の方が病のようだね」
咳き込む娘の背中をさする母には悲壮感があった。
「同情している立場かね」
スーツの男が私の心臓を指さす。
はっと目を覚ますと大学病院がある駅だった。麦わら帽子の母娘が階段を降りて行く。
「あっ」
胸ポケットにトルコ石のような卵が一つ。
革靴で難儀している横を白いお揃いのワンピースと麦藁帽子をかぶった母娘が小さな丘に向かって歩き出す。そちらに目を移すと、水色のワンピースを着た少女が籠を持って手を振っていた。
「卵売りですな」
ぎょっとして振り向くとスーツ姿の男がぷかりと煙草を燻らしていた。
「卵売り?」
「その卵は寿命が延びるという噂だよ」
「はあ」
「その様子じゃ、うっかり寝過ごしたというところかな」
母娘が卵売りの少女から小さな包みを受け取って戻ってくる。
「娘の方が病のようだね」
咳き込む娘の背中をさする母には悲壮感があった。
「同情している立場かね」
スーツの男が私の心臓を指さす。
はっと目を覚ますと大学病院がある駅だった。麦わら帽子の母娘が階段を降りて行く。
「あっ」
胸ポケットにトルコ石のような卵が一つ。
ファンタジー
公開:21/07/14 23:37
gonsukeさん作品
「ある夏の日」より
子供の頃の夢
卵売りの少女
砂浜と青い海
恐竜の骨
蒸気機関車
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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