飲まず食わず

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男は、一週間以上、森の中を飲まず食わずでさまよっていた。男が死を覚悟した矢先、目の前に小屋が現れた。薄汚れた看板に「食事処」男は、助かったと思い早速入る。店内は狭く、小さなテーブルと椅子。男は座る。そしてメニュー表を探す。が無い。壁には「飲まず食わず丼」と書かれた紙が貼られているだけ。男はとにかく腹が減っていたので「飲まず食わず丼」を注文しようと思った。店員がいない。厨房らしき方に「すいません」と言ってみる。反応が無い。困ったなと思い視線をテーブル戻すと丼がすでに置いてあった。いつの間に置いたのか。不審に思ったが手に取って、蓋を取る。見た目は最悪だった。そして匂いも。しかし、男は空腹に耐えきれずそれを口に運ぶ。やはり不味かった。しかし、味とは裏腹に男はどんどん元気が漲って来るのが分かった。男は丼を完食し、会計をしようとする。やはり店員はいない。そして、気付く。出入口が、どこにも無いことに。
ファンタジー
公開:21/07/14 17:58

ソフトサラダ( 埼玉 )

時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。

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