おかき語

4
4

夏休み、田舎に帰省すると必ず一斗缶のおかきが居間に置いてあった。
「じいじもばあばもおかき好きやね」と言えば
「おかき語に使うんよ」と素っ気なく母は言った。
祖父母は些細な事でよく喧嘩をした。
口喧嘩が始まるとどちらかが一斗缶をちゃぶ台に置き
二人向き合っておかきを食べるのだ。
言い合いよろしく祖父がバリボリ食べるのを待って祖母がバリボリ食べる。
初めて見た時は呆気にとられたが、後で母が「アレがおかき語」と教えてくれた。
夏のある日、いつもの様にバリボリ応戦する中
何気なく私がおかきを取りバリボリ食べた事があった。
祖父母は目を丸くし程なく一斗缶の蓋を閉じた。
結果的に喧嘩の仲裁をしたようだ。
「まさかあんたがおかき語使うとは」と同じく目を丸くした母が言った。

一斗缶まではいかないが缶入りのおかきが今年も実家から送られてきた。
あの時私は何を喋ったんだろう。
夏空に向けてバリボリ尋ねた。
ファンタジー
公開:21/07/14 10:13

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容