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私の職場には、人を鬼にするという噂の仮面があった。
部下を虐げる係長を鬼にしよう。その話が同僚から持ち上がったのは、長い説教をされた会議の後だ。
「本当に最低の上司だよ」
「鬼にしちまおう」
恐ろしい話だった。輪に混ざらないよう同僚から離れ、倉庫へ行った。
仮面は静かな形相で窓枠に立て掛けられている。こんなもので人間が鬼になるものか。怖いもの見たさで顔にあてがってみる。しかし、何も起きなかった。
「人が鬼に、なんて。くだらない」
ため息を吐き、仮面を戻して帰宅した。
翌日、出勤すると警察が出動していた。同僚は青ざめた顔でデスクに座っている。
「仮面をつけたら鬼が来たんだ」
「そんで、アイツを喰って……!」
泣き喚き、半狂乱になる同僚を男性が数人がかりで押さえつける姿を横目に見ながら、給湯室に立つ。
あの上司、やっぱり不味かったなあ。
たらふく食べて丸くなった腹を、私はそっと撫でた。
部下を虐げる係長を鬼にしよう。その話が同僚から持ち上がったのは、長い説教をされた会議の後だ。
「本当に最低の上司だよ」
「鬼にしちまおう」
恐ろしい話だった。輪に混ざらないよう同僚から離れ、倉庫へ行った。
仮面は静かな形相で窓枠に立て掛けられている。こんなもので人間が鬼になるものか。怖いもの見たさで顔にあてがってみる。しかし、何も起きなかった。
「人が鬼に、なんて。くだらない」
ため息を吐き、仮面を戻して帰宅した。
翌日、出勤すると警察が出動していた。同僚は青ざめた顔でデスクに座っている。
「仮面をつけたら鬼が来たんだ」
「そんで、アイツを喰って……!」
泣き喚き、半狂乱になる同僚を男性が数人がかりで押さえつける姿を横目に見ながら、給湯室に立つ。
あの上司、やっぱり不味かったなあ。
たらふく食べて丸くなった腹を、私はそっと撫でた。
ミステリー・推理
公開:21/07/16 11:27
生まれ変わったらジンベエザメになりたい。
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使用写真はすべて自分で撮影しています。
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