役に立たない雨具

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物置から見覚えのない傘が出てきた。
埃を払って開くと、錆びも破れもなく、妙に手に馴染んだ。

その傘を使うようになって、仕舞い込まれていた理由が分かった。
持って出掛けた帰り道に必ずひどい雨が降るのだ。それも傘を差す意味がない程の。
効果が現れるのは帰り道だけで、嫌な予定を避けるためには使えなかった。
日照りの時の最終手段にするかなどと考えながら、そっと傘を物置に戻した。

ある晴れた朝、久々に件の傘を引っ張り出した。
今日はいつもつれない先輩と遊びに行く予定を取り付けており、目的地まで乗っていく電車は雨に弱いことで有名な路線を走っている。
自分勝手な使い方だとは思うが、少しでも長く一緒に過ごしたくて必死なのだ。

結果として、僕の目論みは外れた。
その日先輩は長靴を履いてきた。それは履いていると必ず晴れる長靴だった。
僕たちは鈍行で帰ることにし、車窓からは消えない虹が見えていた。
青春
公開:21/07/16 02:44

まるちーず( チェンマイ(嘘) )

『ショートショートでひらめく文章教室』を読んで書き始めました。
文章書けるようになりたいです!!

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