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「あなたの部屋で隠し扉を見つけたんだけど、鍵がかかっていて開かないのよ」
土曜の朝に郷里の母からの電話で叩き起こされた。寝ぼけ眼で起き上がり、眼鏡を探しながら「一体何の話だい」と返した。
「だから、二階のあなたの部屋の押入れのこと。中の布団がカビ臭くなっちゃって今朝処分したの。大変だったわ。そしたら奥に子供一人が入れそうな扉があって」
「押入れに?」
一瞬、親に見られたくないものの類かと少し慌てた。だが、遠い昔にすべて処分済みだったし、そもそも押し入れに何かを隠した覚えはなかった。
「扉も鍵も、まったく心当たりはないけど」
「あら。それじゃ気味悪いから、業者を呼んで開けてもらうわよ」
「うん、構わない」
そう言って電話を切った後、急に思い出した。高校1年の冬に父が不慮の事故で亡くなり、押し入れの中で一晩泣き明かしたことを。母さん、その扉は開けちゃだめだ。あの時の悲しみが蘇ってしまうから。
土曜の朝に郷里の母からの電話で叩き起こされた。寝ぼけ眼で起き上がり、眼鏡を探しながら「一体何の話だい」と返した。
「だから、二階のあなたの部屋の押入れのこと。中の布団がカビ臭くなっちゃって今朝処分したの。大変だったわ。そしたら奥に子供一人が入れそうな扉があって」
「押入れに?」
一瞬、親に見られたくないものの類かと少し慌てた。だが、遠い昔にすべて処分済みだったし、そもそも押し入れに何かを隠した覚えはなかった。
「扉も鍵も、まったく心当たりはないけど」
「あら。それじゃ気味悪いから、業者を呼んで開けてもらうわよ」
「うん、構わない」
そう言って電話を切った後、急に思い出した。高校1年の冬に父が不慮の事故で亡くなり、押し入れの中で一晩泣き明かしたことを。母さん、その扉は開けちゃだめだ。あの時の悲しみが蘇ってしまうから。
ファンタジー
公開:21/07/16 02:01
更新:21/07/19 05:38
更新:21/07/19 05:38
秘密
押入れ
思い出
2022年から米国在住。
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