1
2

久しぶりに実家へと帰ってくると兄が稲刈りをしている真っ最中だった。
「おう!おかえり!もう暫くかかるき、お前は家でゆっくりしよれや」
「いや…仏壇に手を合わせたら帰るよ」
そっけなく兄に答え、お土産を渡した。
「そっか…それより見てみぃ。今年は害虫や害獣の被害がなかったから大豊作やぞ」と黄金の稲穂を自慢げに見せつける兄。ふ~ん…興味ない。
「これも化可視のおかげだ」と畑のカカシを指さした。
「化可視?案山子だろ?」
「いいや、案可視だ。ちょっと田んぼ入ってみぃ。驚くぞ」
溜息を吐き田に足を踏み入れるとカカシが僕を見た。
『おぅ…帰ってきたか。早よ手伝え』
カカシが父の顔をしていた。
「どうだ?畑に人がいるように見せかける、可視化させるカカシ・化可視だ」
奥には母も祖父母もいる。懐かしさがこみ上げてきた。
「…手伝うよ」
上着を脱ぐ僕に「そう来なくちゃな」と兄は父そっくりな顔で笑った。
SF
公開:21/07/15 19:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容