星螢

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満天の星が輝く夜空を見上げてごらん。
あそこに天の川が見えるだろ。
よく目を凝らしてみると天の川の周りがキラキラ光っているんだ。
あれは「星螢」と言うんだよ。
よーく耳を澄ましてごらん。
『ほ ほ ほたるこい
あっちのみずは にがいぞ
こっちのみずは あまいぞ』
聞き覚えのある歌が聴こえてきただろ。
『にがいみず』は暗黒星雲のことさ。暗黒星雲は「石炭袋」とも呼ばれていて、その孔は石炭のように真っ暗闇で、深い底は苦い水で満たされているので、星螢は避けて寄りつかないんだ。
『あまいみず』は天の川のことさ。天の川は「ミルキーウェイ」とも呼ばれていて、牛乳のように甘いので、星螢が好んで天の川に寄ってくるんだ。

そろそろ銀河鉄道が発車する時刻だ。一緒に君も銀河鉄道に乗って天の川で星螢を眺めてみるかい。それは美しい光景さ。
俺が誰だって? 名乗るほどではないけれど「カムパネルラ」って呼ばれているよ。
ファンタジー
公開:21/07/11 07:01
満天 夜空 天の川 暗黒星雲 石炭袋 ミルキーウェイ 銀河鉄道 カムパネルラ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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