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謎の男。社内で彼はそう呼ばれている。中肉中背のどこにでもいそうな男。顔に特徴はない。いたって普通だ。「謎の男」と大きくプリントされたTシャツをいつも着ている。しかし、誰も彼の素性は知らなかった。ある日、突然、Tシャツの文字が変わった。「怪しい者ではありません」その怪しさに皆、慄然とした。そして、その日はやってきた。朝から降りだした雨が強くなった昼過ぎ、彼は突然Tシャツを自らの手で引き裂いた。彼の肌が露出する。彼のお腹に文字が浮かび上がる。彼は自身の腹を指差し、高らかにその文字を叫んだ。「入梅!!」
雨がいっそう強くなった。
ミステリー・推理
公開:21/07/10 18:23
更新:21/07/10 22:30

ソフトサラダ( 埼玉 )

時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。

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