空を読む

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並んで川辺に腰掛ける。
陽は傾き涼しい風が遠くのガタンゴトンを届けた。
「ごめん急に」
「久しぶりやな。学生以来か」
昔と変わらず噛み合わない君の返事に少し和んだ。
しばらくは世間話をした。
「ところで何があったん?」
お互い流れに乗るカモを見つめる。
「…何か色々駄目。仕事も何も」
「ほぅ。俺も偉そうに言える状況じゃないけどな」
君は立ち上がった。
「ちょっと目瞑ってくれるか」
「何よ急に」
「ちゃうわ。まじないや」
目を瞑るとご指名光栄ですと背後から聴こえ頭を小突かれた。
「昔から空気読み過ぎやねん。そやから抜いといた」
「ちょっ…」
「何が見える?」指差された先を見る。
「え…空?あ、あの雲もうすぐ夕立くるかも」
「早速!空が読める人に変わったで」
そうか。
噛み合わないじゃなくて優しかったのか。
「さては私に気があるな?」
「上手い!お前の気抜いたとこや」
久しぶりに大声で笑った。
青春
公開:21/07/12 17:17

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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