七夕祭りの釣人

とある七夕の日のこと。小さなお話の宙を統べる宙帝様は、にわかに釣りがしたくなり、天の川へおいでになりました。
彦星の造った牛頭船に、織姫の織った帆を張って、宙帝様は天の川へ漕ぎ出して行きます。
北斗星の竿に特製の話糸（はなし）をかけ、北極星の浮き球をちょいと垂らせば、川の星々はくるくる渦を巻き、地上に通じる不思議のトンネルが開くのです。

地上のさるお話の庭も、ちょうど七夕祭りの最中で、庭の真ん中のオススメ笹に、色とりどりの願い星が瞬いています。
気ままに願い星を釣り上げては、天の叶い星と入れ替えて楽しんでいた宙帝様。ふと目に止まった願いに『いいですねぇ！』と膝を打ちました。

『七夕祭りが盛り上がりますように』
いっぴきの柴わんこが掲げた願い星を、宙帝様はご自分の北極星と入れ替えました。
かくして柴わんこを中心に、たくさんのお話の星がめぐり集い、地上の七夕祭りも大いににぎわったのでした。