七夕病

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病室の掛け時計がガチリと音をたて、針は0時0分を指した。
7月7日。
しかし、ベッドに横たわる青年は目を覚まさない。
「先生、息子はまだ起きないのですか?」
青年の母親は言った。
「申し訳ありませんが……」
医者は神妙な面持ちで続ける。
「お母さんもご存知だと思いますが、息子さんがかかっている病は七夕病。昏睡状態に陥った彼らは、一年に一回、奇しくも七夕の日のみに目を覚まします」
「そんなことは知っています。もう今年で8回目なんですから」
「実はお母さんには伝えていなかったことがあるんです」
「伝えていなかったこと?」
「七夕病の彼らが目を覚ますのは、待っている人がいるからなんです。誰にも必要とされなくなれば二度と目覚めない。お母さんは息子さんを想う気持ちがなくなったんです」
「そんな……」
「でも、今までで頑張ってきたあなたを誰が非難できるでしょうか?」
母親は静かに膝から崩れ落ちた。
公開:21/07/07 21:20
更新:21/07/07 22:27
七夕祭り

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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