みつめる幽霊

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幽霊はどこにでもおり、時空間の概念がない。しかし、現在で存在が消滅しているので、未来を見ることはできないのだろう。
最後に目を開けた病院で、かけつけてくれたのだろう、泣いている彼女の顔があった。彼女は元気だろうか? 様々なことを理解し、様々なことを失念していたことを思い出す。
幼い頃の自分に手を振る。子どもは不思議そうな顔をしていた。
「お母さんの言うことを聞かないとだめだよ」
「横断歩道は左右を確認して、渡らないといけないよ」
街へ出ることにした。通り路には、煙草の吸い殻が落ちていた。
先には遊園地があった。スタッフも幽霊らしく、足がない。霊界がリンクして、僕を観覧車に呼び込んだ。
目前の窓に広がっていく、街の景観。こんなにも色彩が鮮やかだとは思っていなかった。それは未来に続く絵で、確かにそこに存在した。僕はそれをみつめる。
未来のこの街で、彼女と知らない誰かが手を繋いで歩いている。
SF
公開:21/07/10 09:11

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