レイン・ドロップス

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あめのよく降る季節がやってきたーー。この王国では、甘雲から飴が降ってくる。
甘空の甘の川の甘い水が甘粒となって甘雲を作る。そして降ってきた飴がレイン・ドロップスだ。国民は、雨の雫のような形をした飴だから「レイン・ドロップス」と呼んでいる。
甘いもの好きの子供や大人は、空っぽのブリキ缶を持参し、レイン・ドロップスを拾って入れる。食べすぎた子供は虫歯になり、大人も血糖値が高くなり大変だ。
昔、甘味島からやって来た甘邪鬼が国王に謁見しようとしたが、会うことが許されず、その腹いせからレイン・ドロップスを降らせるようになったと伝承されている。
ただ、レイン・ドロップスが地上で溶けて甘い水になると、甘の川に住む蛍が降り立ち、夜には闇の中を輝く姿が季節の風物詩となっている。
甘菓子の丘は蛍の名所で、甘の川に向かって舞い上がる蛍の銀河が見られる。その光景を甘い水から作った甘酒を飲みながら眺めるのが一興だ。
ファンタジー
公開:21/07/10 07:01

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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