横から虹を見てくぐった話

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 夕立の後、濡れたアスファルトに染み出た夕日を撥ね上げて自転車を漕いでいると、前方に虹が立っていた。
 「随分太い虹だ」と思いながらずんずん近づいていくと、前方で山高帽を被った男が「氷」の旗をブンブン振っている。
「どこかでみた顔だな」と思いながら自転車を降りると、男は「レインボー」をシャリシャリと崩しながら、
「見ていましたね?」と言う。
「え? 何のことでしょう?」
 と空っとぼけて見せると、男は怒った顔になって、
「あれはワタシが見ていたのです」
 と、南の空を指さした。
 そこには、太い七色の柱が垂直に立っていた。
「つまりっ、その真横がここなのですよ!」
 男は興奮して「レインボー」を一気に飲み干した。
「あ、頭が……」
 男がコメカミをグリグリしている隙に、ボクは自転車に飛び乗った。
「あ、コラ待て!」
 という男の声を背後に聞いて振り向くと、もう空は真っ黒な虹に覆われていた。
ファンタジー
公開:21/07/10 06:14

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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