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室町時代に花開いた能文化がおよそ700年の時を経て現代日本に蘇った。欧州から来た極東特派員としてこの国の新たな身だしなみ文化をご紹介しよう。

能役者が演目に応じ、翁、小面、般若などの仮面を使い分けるように、日本人はその日の気分や人生のステージごとに実に器用に仮面を使い分ける。彼らは決して素顔を見せようとはせず、仮面をつけずに誰かに会うのはマナーにもとる行為として蔑みの対象になるほどだ。自宅に数百枚の仮面を持つのは当たり前で、富裕層には湿度管理の行き届いた仮面庫が人気という。また、仮面さえあれば男にも女にもなりきれるので、男女間の恋愛が昔よりも難しくなっているそうだ。先日取材した若者は「素顔を明かしたら男同士、女同士だったなんてザラですよ」と話す。

そもそも結婚後もお互いの素顔を知らないという夫婦も少なくない。聞けば「恥ずかしいから」という。彼らの仮面に彩られた人生は、死ぬまで続くのだ。
ファンタジー
公開:21/07/10 01:00
更新:21/07/19 05:41
仮面 裏の顔 日本人

アカサカ・タカシ( Chicago )

2022年から米国シカゴ在住。

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