ロータリー

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梅雨明けが発表された日の午後、私が火葬場を出ると、夏の太陽が照りつけるロータリーに停まっている車は一台もなく、歩く人もなく、一本の大きなケヤキと塩の自動販売機、そこに夫の自転車が立てかけてあるだけ。さっきまで激しく鳴いていた蝉の声が今はまったく聴こえなくて、まるで酸素を抜いた真空の星に立っている、そんな気がした。
古墳のようなこんもりとした芝生の丘に一頭のツキノワグマが遊んでいて、小さな柴犬をくわえたり放ったりしている。ぷすかぷぷすかと無邪気に鳴り続けるクマのおならが、お祭り屋台の焼きとうもろこしみたいなそそるにおいを放ち、私の頭はぼーっとしてしまう。
私はクマに一礼して、におうクマの肛門をくぐり、まずは左耳からぐるりと出て、また一礼をしてから肛門をくぐる。今度は右耳からぐるりと出て、機嫌のわるいクマに正面から齧られる。
エントランスにひとり立つ喪服の夫に手を振って、私はこの星を出てゆく。
公開:21/07/09 12:15

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