ジェットコースター

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 ガタンガタンと天に伸びるレールを前に隣の志帆を睨んだ。
「話があったんじゃないのか」
「ね、最高地点だって」
 言葉を発そうとした瞬間、ジェットコースターは急降下した。歯を食いしばる俺を嘲笑うかのように回転とひねり技を繰り出し、放り出された足が人形のようにぶらふらと揺れた。
「情けないねぇ。はい、お茶」
「うるさい。何で待ち合わせが遊園地なんだ」
「初めてデートした場所だからかな」
「志帆と則本のだろ」
「三人でも来たじゃない」
 三人は幼なじみだった。
「真面目な声で電話してくるから結婚報告かと思うだろ」 
「あのね、ふられちゃった」
「え、」
「好きな人が出来たんだって」
 先日、則本に会った時は何も言ってなかった。
「ねえ、もう一回乗らない?」
 志帆も食いしばって耐えようとしているのかもしれない。
「次は泣くかも」
「誰も見てないよ」と、志帆はこぼれた涙を拭った。
青春
公開:21/07/08 22:39
ジェットコースター 幼なじみ

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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