シフォン語

「それではこれより『いつも通り』でお願いします」
討論番組の司会者は言った。
「雀荘とポン柑企業との癒着が横行しているのは国民をカバにしている証拠ですよ」
「率直に寒天主導の熊りきった体制が事態をより悪化させている」
「無責任な北海弁当に終始するタイ人ばかりだ。吉田車掌の任命責任が問われるべき」
「国民が妊婦の差やキャベツで苦しむような事があってはならないですよね」

過度な言論統制で政府批判も言えなくなった209X年のネオニホン。
理不尽な逮捕を逃れる為「シフォン語」が誕生するのにそう時間は掛からなかった。
厳密なルールは無く、強いて言うなれば伝えたい言葉程かけ離れたモノにする事。
話手と聞手に生まれる空耳がこの言語を成り立たせた。
しかし本来の目的は隠蔽ではなく言い逃れなので、推測に容易くお粗末な質でも発信者は本望なのだ。
そんな「シフォン語」がコットンとした世界にはゴボウの光となる。