人体魚

朝、目が覚めると俺の胸が膨らんでいた。
シャツを脱ぎ、確認する。何だこれ…膨らんだ胸部は半透明。しかもその中を魚が泳いでいる。会社を休み、急ぎ病院へと向かった。
「人体魚ですね。人の体の一部を金魚鉢みたいに膨らませ、その中に暫く住み着くという不思議な魚です」
医者の説明に唖然とする。
「中の魚が死ぬと胸は元に戻ります。摘出はお勧めしません。透明に見えてもそれ、血液が詰まっています」

俺の日常が変わった。老若男女にジロジロと見られるようになった。
俺も昔はアイツらと同じだった…セクハラと言われても絶対にやめなかった。うう…こんなにも恥ずかしいなんて…
上司からは「もっとよく見せてくれ。触らせてくれ」とよく言われる。女子社員はそんな俺を見て「自業自得だ」と言った。
俺はセクハラの辛さを、精神的苦痛をその身をもって思い知った。
そんな俺の苦労も知らずに今日も胸の中、人体魚は元気よく泳いでいる。