空に願いを

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寝ても覚めても夢を見ている。
真正面から覗くことはできない。いつも横顔だけが浮かぶ。

どっちつかずの心を、映し出したような曇り空。
今夜は七夕だっていうのに。

昨日渋谷のイベントで一緒に飾った短冊を想う。
何も書かれていない白紙の短冊。

叶わないのは知ってる。
(だから、願ってる)

彼女は怪訝な目で私を見た。
足もとに流れる深い川。

「書かなきゃ叶わないよ」
「いいの」

水面に波紋を広げるのは、催涙雨。

降るならいっそ、洗い流してよ。
なにもかもね。

雨脚が強まり、窓に乱雑に水滴がほとばしる。
カーテンを閉じて部屋の照明を落とす。

ベッドの上に寝転んで、風の音に耳を澄ませる。
それは窓の外から、胸のうちから聴こえてくる。

やがてまどろみの中で、私は虹を見る。
彼女と手をつないで、虹の下を歩いている。

「見て、きれいだ」
私は空を指差して言う。

彼女の横顔を見ながら。
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公開:21/07/07 18:00
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