一筆啓上、

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――と、筆を走らせたところで手が止まった。
想像の内ならどんなにも書ける気がするのに、いざ紙に向かうと、途端に行き詰まるのはなぜだろう。書きたい事は、頭の中で溢れんばかりに渦巻いているのに。

どうせ届きはしないのだから。弱気の虫がまたぞろ言い訳を探し、ためらった末に短冊の中央へ墨汁の染みを打った。
地上の伝説なら年に一度逢える。天文の上でも、光の速さで十数年の距離にいると云う。
けれど僕達の恋は、天地を逆さに降っても叶うはずがない。
出逢う相手を間違えたのだ――そうと知ってなお募る想いの丈を、僕はどうやって君に伝えればいいのだろう?

どうせ届きはしないのだけど。まっさらな短冊を下ろし、僕はまた筆を走らせる。
一月前を生きる君に、永久に間に合わない願い文を。

『この世界の尽きるまでに、一目だけでも逢えますように』
新暦の織姫へ、旧暦の彦星より。
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公開:21/07/07 01:24
七夕祭り 七夕、新暦と旧暦(伝統的七夕)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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