銀河星糸場

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満天の星空では、今宵も銀河星糸場がフル稼働だ。
銀河星糸場では、流れ星が通った軌跡で糸を紡ぐ。その際、目の前を流れる天の川の水を蒸気に使う。
出来上がった糸は、冷涼な夜のようにひんやりしており、風通しがよく、夏場に着るクールビズやパジャマ、浴衣などの衣類の原料になっている。
一から六まで肉眼で見える星の明るさを示す等級や、青、青白、白、黄、橙、赤……星の温度を示す色によって糸も多種多彩で、高価なものから庶民的なものまで、さまざまなグレードの糸を生産している。
プレミア付きの超特上品は、七十六年に一度しか現れないハレー彗星の軌跡で紡いだ糸だ。これは、天界御用達の創造主への献上品だ。
銀河星糸場の経営者は織姫で、年がら年中大忙しだ。珍しい星の軌跡を見つけてきては糸の研究開発に余念がない。
だが、そんな織姫も年に一度だけ七夕の日は休む。
そう、天の川を隔てて待ちわびる恋人の彦星に会うためにーー。
ファンタジー
公開:21/07/04 07:03
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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