034.晴雨(はれるや)

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「あの、すいません」
「はい?」
 とある休日。
 彼女は、道で爬虫亜族の女性に声を掛けられた。服装からして外の大陸から来た観光客とすぐに分かった。声をかけてきた理由は案の定、東大陸国特有の現象である"空魚"についてだった。特にここ、霊峰白渓がそびえる練島では、頻繁に見られるため、春月・秋月は特に観光客の来訪が増える。
 彼女のような妖霊族が、空魚などの粒子が関わる事象に敏感である事もよく知られるようになった。
「そうですね。今日は…」
 出逢える望みは少ないと言おうとした時だった。青色が占めていたばずの空から、大粒の雫が降ってきたのだ。慌てて近くの軒下に避難する二人。
「天気雨ですか」
「ここでは晴雨と言います」
「はれるや?」
「すぐに止みます。その後ならきっと出逢えますよ」
 空気中の不純物が地上に流れ落ちた後は、粒子の集約が起こりやすい。
 そして、彼女の言葉は現実のものとなった。
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公開:21/07/04 02:50
更新:21/07/04 08:22
ファンタジー 天気雨 観光

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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