昭和の忘れ物

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古道具屋の店先には昭和の懐かしい物が並んでいた。
店に入るとダンボール箱があり開けて見て良いですかと訪ねると、店主は蓋は開いていますから勝手に見て下さいと言った。
開けると上に昔の黒電話が入っていた。突然ベルが鳴り、とっさに受話器を取ると女の声で「私はもっと文句を言いたかったのに、勝手に切るから、ここでジート待ってたのよ!」と一方的にしゃべり始め、思い出せないが何故か懐かしい声だ。
黙っていると、「もういいわ」と切れた。
下にオルゴール箱が入っており手にすると、若い頃聞いていた懐かしい曲がながれた。いつか音が出なくなり捨ててしまっていた。
底には小さな硝子瓶があった。給食の時にふざけて飲んで、落とした牛乳瓶と同じだ。
その時慌てて拾おうとし怪我をした。まだ傷跡は指に残っている。どれも自分の懐かしい思い出に繋がっている物ばかりだ。
私はオルゴールを買って店を出た、外は茜色の昭和の空だった。
ファンタジー
公開:21/07/03 12:46

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