032.善人

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「何だよここ?」
 相棒は青ざめた顔で呟いた。
 死んだ同僚の遺品を整理しようと、自宅を訪れた俺たちが見つけたのは、知る由もなかったあいつの趣味だった。壁には美術品のようにおびただしい数の刃物が飾られていた。
 本棚にはポルノ系の本とスケッチブックがすき間なく敷き詰められていた。掲載されているのは童顔で小柄な女性ばかり。スケッチブックの方は明らかに幼い少女のイラストが所狭しと描き連ねてあった。
「あんないい奴が…」
「ずっと独身の理由はわかったな」
「何て報告する?」
「言う必要あるのか?」
「こんなヤバい一面を隠してたんだぞ。当然だろ」
「誰にだって人に言えない趣味ぐらいある」
「こんなの度を越してる。実際行動に移してたかも」
「証拠はねえだろ」
 あいつが命の恩人という理由だけではなかった。俺にはこの部屋が、あいつが"自分"を抑え込むために戦い続けた証拠に見えてしょうがなかったのだ。
ミステリー・推理
公開:21/07/03 08:18
犯罪 趣味 警察

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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