現実逃避

現実ではどうにもならないから。
　現実から逃げるのだ。
　
　仕事の資料を隅へおいやって、ゲームを開く。
　
　現実世界では平社員の僕も。
　ゲームの中では魔王を倒す勇者だ。
　気ままに旅する旅人だ。
　
　どんなに強い敵だって、マジメにコツコツレベルを上げれば、いつか必ず倒せるし。
　どんなに遠い目的地だって、歩き続ければ必ず辿り着ける。
　
　現実ではそうはいかなくて。
　どんなにマジメにコツコツ頑張っても、実らない結果は実らないし。
　歩き続けたところで無駄に疲れるだけだ。
　
　だから僕は現実逃避をする。
　『必ず』が叶う世界へ逃げるのだ。
　
　勇者になって、自由に旅して。
　
　そうして少し楽になったら。
　
　今度は、『平社員』の僕を動かす。
　元々ゲームは好きなのだ。無理ゲー、馬鹿ゲー、クソゲー上等。
　
　「さて、資料作るか」
　
　そうして僕は、現実の中で生きるのだ。