七日の洗車雨

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「……しまった、忘れてた!」
七月七日の朝、僕は寝床で飛び上がった。
身支度もそこそこに駐車場へ駆けつける。泥と埃まみれの愛車、平たく言えばおんぼろの作業車が、ふて腐れた声で『モォ~』と鳴いた。
「間に合うかな、今から洗車」
せめて雨が降ってくれればまだしも、今年は一日中晴れの予報。そんな事もあろうかと天気局に予約したのに、完全に無駄にしてしまった。
「ンモォ~!」
「はいはい僕が悪い。解ってるよ!」
川の水をヤケクソでくみ上げバシャバシャ洗う。少なくとも雨でお流れの心配はない、良い方に考えよう。
約束の直前まで汚れと格闘し、乾ききらない車を飛ばして彼女の待つ岸へ。

「ごめん、遅くなった!」
「ありがとう。……すごく綺麗」
少し眩しそうに目を細め、微笑む彼女がはっきり見える。
星の雫を振りまきながら、自慢顔で鼻を鳴らす車。
「お疲れ様」
僕の髪をそっと拭う、彼女の指もキラキラ光っていた。
青春
公開:21/07/05 00:56
七夕祭り 洗車雨(七月六日に降る雨)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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