無人駅にて

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今日、私が愛した駅が取り壊される。
昔はこの駅を多くの人が利用した。今、利用者は私だけ。
本来ならもっと早くに取り潰されるものをこんな老婆の我が侭を聞いてくれた駅員さんが頑張ってくれた。無人駅として生き長らせてくれた。だから寂しくはあるが感謝しかない。
駅を見つめる。ふと構内に人影を見た。赤子を抱いた女性だ。幸せそうに笑うその姿は母そっくり…
その姿が消えると次に現れたのは小学生の女の子。女の子は瞬きをする度に中学、高校、大学生へと変わっていく。
スーツを着た女性がいた。子供を抱いた女性が現れた。青年を見送る老女に哀愁を感じた。
そこで気づいた。ああ…あれは私だ。駅が私との思い出を投影してくれている。
それは駅が私に見せる走馬灯とも呼ぶべきものだろうか。
最後に今の私を鏡写しのように見せた駅。それを最後にまるで火を消したかのように駅の温かみが消える。
私は「ありがとう」と呟き、頭を下げた。
公開:21/07/04 19:32

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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