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真夜中に突然、電話が鳴った。
「えー、深夜の友よ、こんばんは。こんな時間に独りで起きているあなたはいったいどんな人なんだろうと思いを巡らせています」
電話の主はやや甲高い声を持つ男だった。いたずら電話に違いないと思ったが、男の軽快な語りに圧倒され、金縛りに遭ったように動けなくなってしまった。

「あなたのシンユウとして語りかけたいと思います」と男は言った。「もちろん親しい友ではなく、深夜の友として」
「はぁ。。。」
「人生は短く、夜もまた短い。この番組も然りです。最後に赤坂のスタジオにメッセージを一言。叶えたい夢は何ですか?」
一方的な展開に戸惑い、口ごもる私。
「ほら、大昔にハガキでリクエストしてくれたヤツですよ。あ、もう時間がない。この番組はリスナーの夢の実現を応援するK社の提供でお送りしました」
焦り声とともに電話が切れた。人に語れる夢なんてどこかに埋めたきり今も見つからないままだ。
ファンタジー
公開:21/06/30 23:29
更新:21/07/19 05:45
ラジオ

アカサカ・タカシ( Chicago )

2022年から米国シカゴ在住。

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