五色月(サンクル)について話そう

　ドリナードの上空には、二つの月が浮かぶ。
　そのひとつであり、世界の中心に浮かぶのがサンクルである。
　季節を象徴する五色の色彩に輝き、その自転と共に世界に季節の移ろいをもたらしている。
　世界で最も質量ある物質と唱えられていたが、後に世界学者の研究により、集約する粒子の密度は非常に低いとされ、地上からの距離の関係で、球状に視認されているだけと判明した。発表当時は、月を女神と捉えるムルナ教からの激しい抗議があったが、現在は真に最大の質量を誇るのはデイル(一日月)という事実と共に定説化している。
　さらに研究の進展により、サンクルを構成する季節粒(サンクティ)は、創作者による失われたマギアによって生み出されたものであり、拡散する粒子の実際の総質量は、平均的なヒトの質量と同等であるという結論が導き出された。それにより、サンクルは元はヒトだったのでは？という説までまことしやかに囁かれている。