ロスタイムは七色に咲く

16
9

昔はよかったわよねえ。植物なんか眺めて、黄昏までボーッと過ごすことができて。
映像を観ては、はて何のことやらと彼が呆けていると、訪問客の報せ。
「あなたのロスタイムをください」
小汚い布切れを着た少女は、そう言った。ドラマでしか彼が見たことない、マッチ配りの少女?
「そんなの殆どないよ。それに、ここが未来なのではないか?」
「言ったでしょう?燃料が足りなかったの」
過去へ向かった人物からマシンを譲り受け、現在に来たのだろうが、何が目的なのだろうか。

人工知能を止めたいの。

「あの人から聞いた、貧乏人がいない未来。でも人工知能はこれから事件を起こして、人間を支配するようになるの」
「そんなまさか」
彼の脳裏をよぎる、なかなか言うことを聞かない仕事先のそれら。
「動作待ちがあるんだ」
受け取ったそれは、種子のように見えた。未来で咲く色とりどりの大事な時間を取り戻す、と少女は決心した。
SF
公開:21/07/02 08:59
更新:21/07/02 19:40

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容