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地方鉄道S線の無人駅に、使われなくなったホームがある。
客数の減少により、二つあった路線の片方が廃線となり、レールも撤去された後、ホームだけが残っている。
駅員も客も来ない、完全な無人のこのホームに、百年に一度の午前零時、幻の列車が来るという。
何年の何月何日かは分からない。実際に列車を見た話も聞かない。ただの噂と半ば諦めながら、一番線の終電を降り、静まり返った二番ホームに立つのが私の日課だった。
七日の催涙雨の向こうから、遮断機の音がする。
前照灯の光が見え、ガタゴト音を刻みながら車体が近付く。プァンと警笛が鳴る。
これに乗れば帰れる。開いたドアを前に思った。
時刻は零時で停まり、車内から私を呼ぶ声がする。こんなにもこの世界で生きにくい私は、きっとあちらの人間なのだ。今、足を踏み出せば――
ぷしゅんと気の抜けた音でドアが閉まる。
雨音が響くホームに背を向け、私は独り家路についた。
客数の減少により、二つあった路線の片方が廃線となり、レールも撤去された後、ホームだけが残っている。
駅員も客も来ない、完全な無人のこのホームに、百年に一度の午前零時、幻の列車が来るという。
何年の何月何日かは分からない。実際に列車を見た話も聞かない。ただの噂と半ば諦めながら、一番線の終電を降り、静まり返った二番ホームに立つのが私の日課だった。
七日の催涙雨の向こうから、遮断機の音がする。
前照灯の光が見え、ガタゴト音を刻みながら車体が近付く。プァンと警笛が鳴る。
これに乗れば帰れる。開いたドアを前に思った。
時刻は零時で停まり、車内から私を呼ぶ声がする。こんなにもこの世界で生きにくい私は、きっとあちらの人間なのだ。今、足を踏み出せば――
ぷしゅんと気の抜けた音でドアが閉まる。
雨音が響くホームに背を向け、私は独り家路についた。
その他
公開:21/06/28 21:10
月の音色
月の文学館
テーマ:無人駅にて
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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