陰ながら…

「つまり、これは『やまびこ』をうまく再現している装置だといえます。言語、音の大小を識別し、大きな音には大きく、小さな音には小さく反響します。また電源は太陽光です。でも安心してください。木の葉がソーラーパネルとなったソーラーツリーなので景観を害しません。わが社では針葉樹タイプを開発しましたので、落葉しなくても違和感がありません」

「おお！」
　集まった老人達が拍手し、契約成立。老人といっても大きく開いた目と口は明らかに人間のそれではない。
「少子高齢化、若者もみんな都会に出ちまったから困っていたところじゃ」
「もうわしらが声を返さなくて済む」

　いやぁ売れた。防犯用に開発したものだが売れればなんでもいい。やまびこ達を紹介してくれたあの目と口の大きな男には感謝しないとな。

「ところであの営業マンはどうやって里にきたのじゃろうか」
　
　都会では知らせを聞いて微笑む男がいたとかいないとか。