すり抜ける

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この壁の向こう側。そこは女湯。

「ああ、壁をすり抜けれたらいいのに!」
「ホッホッホ。すり抜ける力が欲しいか?ワシが与えてやろうか?」
「えっ!?」

そこには、仙人みたいな立派な髭を蓄えた裸の老人がいた。もちろん裸なのは当然だ。なぜならここは温泉の中なのだから。

「欲しい!欲しいよ!!すり抜ける力!!」
「では……はあぁああああ!!!!」

老人は俺の方に手を向けて念を送ってきた。

「ふぅ。よし、これでお前は、すり抜ける」

体は何も感じない。本当にこれですり抜けるようになったのだろうか。俺は試しに壁に手を当てる。

「うおっ!マジじゃねぇか!すり抜ける!これで女湯を覗ける!ありがとうな、爺さん!」

俺は女湯を覗く事ができるようになった。しかし後で分かった事がある。それは、何もかもすり抜けてしまうという事だ。

俺は、誰にも触れる事ができない体になってしまった。
ホラー
公開:21/06/27 23:55

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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