天気雨
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「どうしても、この日は雨を降らせたいんです」
誠が懇願すると、天国内サービスカウンターの鬼は困った顔をした。
「清水誠さん、折角積んだ徳を雨になんかしちゃって良いんですか?」
誠は鬼の手にあるポイントカードを見つめた。
「良いんです。この為に貯めたようなものなので」
「何の日なんです?」
「大切なーー友人の結婚式なんです」
誠が生前付き合っていた恋人が、新しい出会いにより、立ち直った事は素直に嬉しかった。
「祝福の雨、という事ですか。お人好しですねえ」
鬼はポイントカードに『済』の判子を押して、新しいカードをくれた。
「最期に約束してしまったんです。結婚式には空から出席するからねって」
彼女の酷く悲しい顔がその時の僕にとって生きる糧であった。
「償いでもあるんです」
ポンと力強い手が肩に乗る。
「伝わりますよ」
「はい」
きっと、その日は温かい雨が降るだろう。
誠が懇願すると、天国内サービスカウンターの鬼は困った顔をした。
「清水誠さん、折角積んだ徳を雨になんかしちゃって良いんですか?」
誠は鬼の手にあるポイントカードを見つめた。
「良いんです。この為に貯めたようなものなので」
「何の日なんです?」
「大切なーー友人の結婚式なんです」
誠が生前付き合っていた恋人が、新しい出会いにより、立ち直った事は素直に嬉しかった。
「祝福の雨、という事ですか。お人好しですねえ」
鬼はポイントカードに『済』の判子を押して、新しいカードをくれた。
「最期に約束してしまったんです。結婚式には空から出席するからねって」
彼女の酷く悲しい顔がその時の僕にとって生きる糧であった。
「償いでもあるんです」
ポンと力強い手が肩に乗る。
「伝わりますよ」
「はい」
きっと、その日は温かい雨が降るだろう。
ファンタジー
公開:21/06/29 20:25
天国
鬼の派遣
天気雨
ポイントカード
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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