紫水派

12
8

画壇では、梅雨の季節だけ雨後の筍の如く集う画家たちを「紫水派」と呼ぶ。
紫水派は、この時期の風景を、紫陽花の色素で作った顔料で水彩画を描く。
山は日に映えて紫色に見え、川の水は澄んで清らかで、山や川の景色が美しいことを山紫水明というが、この真ん中の二文字から紫水派となった。
紫水派は、江ノ電や箱根登山鉄道の車窓から見える紫陽花を題材とした展覧会を開く。
会場では、雨に濡れてしっとり美しく咲き誇るカラフルな紫陽花の絵画が所狭しと陳列される。
紫陽花の色素に含まれるアントシアニンが反応して、日によって青色に見えた絵画がピンク色に、また逆にピンク色に見えた絵画が青色に見えることが一興だ。
ただ、どうしても似た構図の絵画が並んでしまうことがある。そのようなとき、描いた者同士でどちらが先に仕上げたか口論になるが、そこは雨降って地固まる、最後は互いの絵画を認め合い、絆を深めるのが紫水派の良いところだ。
その他
公開:21/06/26 07:26
画壇 梅雨 雨後の筍 画家 紫陽花 色素 顔料 水彩画 山紫水明 アントシアニン

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容